project: 石神井台の家
year:2020
「つくることをしないでください」
そんな設計依頼から始まった計画。
彼女のもとの住まいを訪れたとき、強い衝撃を受けた。
家の中にあるほとんどすべてのものが、隠されることなく堂々と存在している。
電子レンジも、洗濯機も、そのままの姿で空間に置かれている。
ものが、丁寧な暮らしとともに、あるべき場所にある。
ただそれだけのことのはずなのに、これまで体験したことのない空気が流れていた。
普段、家電はできるだけ隠し、収納も整えて設計してきた自分にとって、
「何もつくらないでほしい」という言葉は、とても新鮮だった。
設計を進める中で、材料の選び方や扱い方についても、こちらが教わることのほうが多かったように思う。
完成後に再び訪れると、以前と変わらず、愛着のあるものたちに囲まれた空間があった。
落ち着いていて、どこか自由で、「好きに過ごしていいよ」と言われているような空気が漂っていて、
自然と嬉しさが込み上げてきた。
収納計画は、ほとんどしていない。板や棚のようなものを重ねたり組み合わせたりしながら、
あるいは蓋つきの箱に収めたりして、その都度、しまう場所をこしらえている。
必然的に、多くのものは見えるかたちで置かれている。けれど、その一つひとつの選び方が抜群に良い。
持っているものについて聞いてみると、ひとつひとつに、それぞれのストーリーがある。
遠くからやってきたものもあれば、身近に手に入れたものもある。高価なものもあれば、
そうでないものもある。
なぜここにあるのかという理由がはっきりしていて、ものや素材に対する考え方にブレがない。
暮らしのあり方が、空間の在り方をかたちづくっている。
新しい家であっても、古い家であっても、
こうして自分の手で整えられた暮らしは、きっと豊かに続いていくのだと思う。























